「経営者のための報酬課税問題」 その3
経営改善コラム - 2016年06月10日

「残波事件の判例から学ぶこと③」

■不相当に高額な部分?

一部のスポーツ選手、アーティスト、優秀な金融トレーダーなどにおいて高額な報酬が記事を賑わすことがありますが、役員報酬について不相当に高額な部分の金額に対して個人の税金のみならず、法人税課税される可能性を説明しても違和感を覚える経営者も少なくありません。
問題は、不相当に高いものに対して課税されるという点ではなく、個人で課税されさらに法人税も課税されるという特殊性にあるかと思われます。また一定額以上に対して法人税課税とされているなら分かりやすいのですが、年俸100億円を超える役員も出現する中で、上場企業の役員報酬が「不相当に高額な部分」として課税されるケースはどれだけあるでしょうか。過去の判例を見る限り、上場企業はほとんど登場していません。

■役員報酬適正額450万円~650万円として課税された事例

上場企業では報酬1億円以上の役員が400名以上に上るようですが(2016現在)、年収960万円でも法人税課税された判決があります。(名古屋高裁H7.3.30)
この判決は、役員報酬を代表取締役360万→1800万、取締役(妻)300万→960万としたところ、それぞれ国税当局が選定した類似法人14社より抽出した各620万、450万を超える計1690万円余りに対する法人税が追徴された課税処分は適法とするものです。役員の報酬としては決して高すぎるとは言い難いですが、報酬の上昇率がひとつの指摘要因になっているようです。
納税者は、類似法人の平均報酬額を知ることは不可能であり、類似法人の平均報酬額を上回る部分を不相当に高額とは言えないと主張しましたが、退けられています。

■役員報酬適正額はいくらか

会社の借入金1億円のために自宅を担保に入れ、全額個人連帯保証し、月額20万円に甘んじていた社長が、来期業績改善を見込んで月額100万円としたいとした場合、適法か否かを判断するうえで類似法人の平均報酬額を知らなければなりませんが、これを知るすべは現状ではありません。「不相当に高額」としてか否かを判断する客観的資料は過去の判決以外には税務当局にしかなく、民間調査会社のデータもありますが、ほとんどが有料で情報量・正確性からしても税務当局と比較すれば圧倒的に乏しい。しかもそれらは開示されていません。1億円を超える年俸に法人税課税されていないケースがあっても国税当局は守秘義務の観点から公表していないのです。
「不相当に高額な部分」について、課税されるか否かの予見可能性に乏しく、税務当局の恣意的な解釈により国民の財産権が侵害される可能性があるため、租税法律主義に反するのではとの専門家の意見もあります。
今後何らかの法整備を期待したいものです。(続く...)

■このコラムのポイント

  1. 役員報酬が不相当に高額な部分の金額に対し、所得税だけでなく法人税も課税されてしまう。
  2. 役員報酬300万円→960万円に増額で不相当に高額と指摘を受けた事例もある。
  3. 役員報酬の改定するにあたり、専門家の意見も求めよう。

このコラムの執筆税理士

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