「経営者のための報酬課税問題」 その5
経営改善コラム - 2016年07月08日

「残波事件の判例から学ぶこと⑤」

■課税庁の主張

泡盛「残波」蔵元酒造会社の役員報酬等を高額として否認指摘した課税庁は、「役員の職務の内容、法人の収益及び使用人に対する給与の支払の状況、同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する報酬の支給の状況に照らし、類似法人を抽出し、その中からさらに比較法人を抽出した上、複数の比較法人中の役員給与の最高額を抽出し、これらを平均した額を超える部分は、不相当に高額であるというべき」だと主張した。

■蔵元酒造会社の主張

これに対し、酒造会社代理人の主張は以下の2点。
比較法人の抽出方法は相当でない上、原告の役員の職務の内容、収益の状況等からすれば、比較法人の役員給与の最高額を超える部分であっても不相当に高額であるとはいえず、原告の役員給与及び退職給与に不相当に高額な部分はない。
②平成18年法律第10号(注:取締役の報酬・賞与等は職務執行の対価)による改正により、法人税法34条2項(注:不相当に高額)は死文化しており、これを適用した更正処分等は違法であるし、比較法人の役員給与と比較して不相当に高額な部分があるとする更正処分等は、憲法84条、31条等に違反する。
(注)憲法84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。その趣旨は、租税を課すことは国民から強制的に財産権を奪うものであり、国民の権利義務にかかわることであるから、国会の定めた法律又は法律の定める条件によるべき。
憲法31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

■東京地裁の判断

処分行政庁において抽出した類似法人の役員給与等の状況等にも照らすと、類似法人の役員給与の最高額を超える部分は、不相当に高額であるというべきである。類似法人の抽出の方法は合理的であり、法人税法34条2項の適用の余地がないとはいえず、更正処分等が憲法84条等に違反するともいえないと、上記②の主張は退けている。
しかし、「比較法人間に通常存在する諸要素の差異やその個々の特殊性が捨象され、平準化された数値であると評価することは困難としつつ、代表取締役の従前の職務の内容等に照らすと、原告の経営や成長等に対する相応の貢献があったというべきであって、その職務の内容等が代表取締役として相応のものであるとはいえない特段の事情があるとは認められないから、同人の役員給与のうち、比較法人の平均額を超える部分が、不相当に高額な部分であるとすることはできない。」
「よって代表取締役の役員給与が比較法人の最高額を超えない限りは、不相当に高額な部分があるとはいえない」と判断した。
いかがでしょうか。
課税庁の違法性はないけれども、平均額でなく類似法人の最高額を超えなければ不相当に高額でない、と判断し、東京地裁では納税者の主張を認めています。今後の状況を見守っていきたいと思います。

■このコラムのポイント

・東京地裁では「比較法人の最高額を超えない限りは不相当な部分があるとはいえない」と判断し、納税者の主張が一部認められた。

このコラムの執筆税理士

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